「 考え方 」一覧

無垢の姿

杉板の書棚

杉板の書棚

素材が本来持っている姿というのは、同じものは二つとなくて、人が手を加えてデザインできる物ではないだろう。そこには、たった一つの嘘もないのだから。
素材のありのままの姿を活かしきることが、それに応えることだと思っている。


豊かに暮らすために

住宅の設計をしていると、必ずと言っていいほど話題になるのが、収納の話。
建築主にとっては、さまざまな条件のなかで、ストレスになるくらい悩みが多い問題ではないでしょうか。
なにしろ、収納をテーマにした本が、数限りないほどでているわけだから、深刻な問題なのだとも感じます。
以前設計した二つの住宅を改めて見てみると、収納の取り方の違いがはっきりしています。
いずれも、年代は違いますが、3人家族の住宅です。

こちらは延べ面積が40坪ほどの、2階建ての住宅です。

I-HOUSE

I-HOUSE

マンション風に言えば、3LDK+書斎。
その収納は、押し入れにして、6カ所分。
その他に書斎の本棚など、小さな部分もあるので、相当なスペースを占めています。

こちらは、延べ面積が30坪ほどの、平屋建ての住宅です。

つつじが丘の住宅

つつじが丘の住宅

収納(ユーティリティ)として、1カ所にまとめて3畳ほどのスペースをとっています。
日常で使うものは、それぞれの部屋に置いて、そうでない物は全てユーティリティにあるので
使う時にここに行けば必ず物は見つかるし、どこに入れたか忘れることもありません。
個室にはクローゼットも一切収納はなく、気に入った家具を置くという考え方で、部屋に必要以上の物がないため、すっきりと暮らせます。

生活していく上では、収納は当然必要です。
しかし、せっかくお金をかけて住まいをつくっても、必要以上に収納を取って、その他の部屋の居心地が悪くなってしまっては、本末転倒です。

「本当に必要なモノ」は、そんなにあるのでしょうか?
これは、真剣に考える必要があると思います。
せっかくの暮らしが、モノに支配されてしまっては、楽しくありません。

私も含めて、人はモノを持つということに、喜びや幸せを感じます。決して悪いことでもないし、むしろ普通のことですね。
しかし問題は、本当に自分に必要で、愛着が持てるかどうかということではないでしょうか。
愛着が持てれば、それは本当に幸せであるし、大切にしまっておけます。

そうでない物は、いつしか収納の奥に眠って、二度と使われることはなくなってしまう。
いつか「使うかも知れない」、「もったいないから」、「とりあえず」取っておこう。
これは、一見すると物を大切にしているように思えるけれど、ほとんど使わず仕舞いで、その存在すら忘れられています。
こういうものは、きっぱり捨ててしまうか、必要な人にあげるか、売ってしまうに限ります。
物は使われてこそ生きるのですから。

そうすればきっと、ストレスのない快適な暮らしになると思うのですが・・・・。物心ともに豊かに暮らすために。

一読お奨めします。
「捨てる」「片づける」で人生は楽になる PHP文庫
著者は斎藤茂吉の長男、精神科医の齊藤茂太先生です。

 


美を考える

WYVERN

WYVERN

建築史の講義だったと思いますが、建築とはどういうものか?と問われたことがあります。建築は「用」「強」「美」を備えていなければならないと。
建築学科の学生ならば、誰でも知っているでしょう。紀元前1世紀ローマ時代のウィトルウィウスが著した建築十書で、建築理論を説いた最古の書物とされています。

この3つの中の「美」。

建築に備わる「美」とは、どうとらえれば良いのでしょうか?
単に美しいということでしょうか?
確かに建築は美しくあるべきです。しかし、美しさという解釈では、主観や時代で変わってしまいます。
建築は、その社会情勢や時代で変化してきていますから、当然その解釈も変わると言っても良いのかも知れません。
しかし、それでは真理とは言えないのではないかと思うのです。
例えば、絵画をみたりすると、その美しさだけではなく、風景や人物がまるで目の前に存在するかのような生々しさを感じたり、知っているはずの風景が、自分が認識していた風景とは違って表現されていたりします。つまり、そこに自分には見えなかった新しい世界が表現されているわけです。だからこそ、驚嘆し、心揺さぶられ、感動するのではないでしょうか。いままで、見えなかった新たな世界を表現すること。

これこそが「美」ではないかと思えるのです。

建築に置き換えると、美しく感動を呼ぶような新しい空間ということになります。どれが優先ということでもなく、すべて同等の要素です。建築は3つのどれを欠いても成り立たないのです。どういう空間なのかと、問われても、私のような文才無き、稚拙な文章では、表現することができません。
そもそも、言葉や文章で表現することには無理があって、感性でとらえるべきものなのかも知れません。
たまたま読んだのですが、数学者の藤原正彦さんの著書に興味深いことが書いてありましたので、付記しておきます。

以下引用

この世のあらゆる事象において、政治、経済から自然科学、人文科学、社会科学まで、真髄とはすべて美しいのだと私は思っています。・・・中略・・・少なくとも自然科学では「美」が絶対です。数学者が数学をつくる時、実用に役立てようという考えはまず頭にまったくありません。美しい理論にしよう、美しい定理にしようと常に心がけます。証明の道筋については常に美しいものが真理への道筋なのです。

これは、凄いです。実用をいっさい考えず、ただただ美しさを追求して行くことが、結果として実用になるということです。
また、数学者ヘルマン・ワイルの言葉も記されています。

真、善、美は同じ一つのものの三つの側面に過ぎない。

真は善、真は美である。
善は真、善は美である。
美は真、美は善である。
正に真理です。

引用部分
日本人の誇り 藤原正彦著
文春新書


ライフスタイル|キッチンのデザインをとおして見えるオーナーの価値観|

価値観やライフスタイルが多様化するなかで、住み手にとって何が必要なのか?本当に必要としているものは何か?
住み手と、設計の打ち合わせを何度も重ねる中で、見えてくるものがあります。
徹底して必要な機能だけを組み込んだキッチンです。
アイランド型にしていますが、手元は隠すようにカウンターは見えなくしています。
キッチンカウンターは、人工大理石、キャビネットはウレタン塗装です。
ガスコンロは2口で十分。グリルも不要。その分収納を大きく取っています。
大型シンクと、下部に食洗機。
カウンター背面の収納スペースには、左右に冷蔵庫と、棚板を設けています。
扉は無い方が使いやすい。しかし正面に見えては見苦しいことからこのようにしています。
天井は3.2mの高さがあるため、レンジフードのようなものは使えませんし、何より見苦しい。換気扇はキャビネットに取り付けて、床下から排気しています。
「必要にして十分」オーナーの言葉です。
それこそが、価値観であり、ライフスタイル(何がしたいか)と言うことです。オーナーは、フランス留学の経験から得た住まいに対する想いが明確でした。
「機能的で生活感があり、身の丈を知り余計なものをそぎ落とした潔さを感じる。室内には、使うものか美しいものしか置きたくない。」
家具は、今まで使っていたアンティーク家具をそのまま使っています。
だからこそ、住まいの空間は徹底してシンプルにつくっています。
床もすべて450角の磁器質タイル
壁面はガラスか白壁
天井も白
必要なもの以外そぎ落としたライフスタイル。いままでの家具も、しっくりなじみます。

5373feecebd5e738b09484dea02845de

ダイニングとキッチン
リビング、ダイニング、キッチンはワンルーム。
3.2mの高い天井。
背面の四角い箱は収納スペース。
アンティークテーブルが映えるモノトーン空間。

00b4624e86dd7c3193df291e2cc3f4c9

キッチンカウンター
必要にして十分
オーナーのライフスタイルを表しています。

b9ea7fcf1e8d7df88fa057e72f55712b

ダイニングキッチンの図面
1枚目の写真と同じ方向の図面です。
中央がキッチンキャビネット。その上が収納スペースです。

 


ディテールを考える

構造材とカーテンウォールの枠材を兼ねたディテールです。
鉄骨造で、鉄材をそのまま現すというのは、実はとても難しい。接合部がそのまま見えてしまうので工夫が必要になります。
tutuji-18

これは、柱材と無目材の接合部。角パイプをFBで挟み込んでいます。柱材に角パイプを水平に溶接して無目材のFBの間に差し込んでボルト接合しています。
単に構造材だけではなく、ガラスを受ける枠材としていて、カーテンウォールの部材としても機能しています。FBに挟まれた角パイプは、電気ケーブルの配線スペースにもなっていて、コンセントやスイッチもこの部分に設置しています。

screen4

幅2m程の廊下状の中庭は、すべてガラスカーテンウォールになっていて、室内と繋がる空間になっています。