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面一に納めるということ

建築の用語で「散り」(ちり)と言うのがあります。
例えば、仕上げの異なる部分や壁と建具枠、柱などの段差やその寸法差などで使われる用語です。
年末の投稿「建築要素」でも記事にした建具枠の部分が完成しました。

仕上げと建具枠

建具枠は色の違う部分です。
壁の仕上げとほとんど面一に納めています。

建具枠と仕上げの散り

建具枠と仕上げの納まりです。
建具枠の散りは2mm。精度が高くないと破綻する納まりです。
下地はプラスターボードですが、大工さんの技能が高く、丁寧に精度良く施工されています。ここで精度が悪いと、仕上げも上手くいきません。
また、塗装職人の技能もかなり高く、丁寧です。パテ処理3回+ペーパー掛け工程を踏んでいます。
かなり厳しい納まりを要求しましたが、精度高く施工できました。職人さんには感謝です。
職人さんとも話をしたのですが、あと1mm散りを多く取っても良かった。とても繊細な納まりになっています。


竣工にむけて

多摩平の家

外壁の左官仕上げが完了し、足場がはずれました。
南と西に開けたバルコニーを巡らせています。奥深い庇が陰影をつくりだしていて、とても良い感じになりました。
残った部分の外壁は、杉板の縦羽目張りになります。
内装は仕上げ材のプライマー施工中で、次週には完了しそうです。
外構と植栽のボリュームがあるので、竣工は3月下旬になります。

 


建築と景観

美しい建築だなと思う。きっと自然と人間の行動によって形成された視覚的な環境とひと繋がりになっているからだ。

竹中技術研究所


竹中技術研究所

竹中技術研究所


建築の「立面」が、単なる間取り決定の産物では景観は良くなるはずもない。
まして、都市部においては敷地規模も狭くなり、境界ぎりぎりに建てられるわけだから、間取りや経済性だけの結果が立面であるような建築は景観に混乱を生み出す。
住宅で言えば、確かに私的なもので私財でつくられるわけだから、思うようにしても良いのだけれど、もう少し私的かつ社会共有の財産として景観を良くするような視点を持たないとだめだと思う。
グローバル化の波にのまれ、物質と価格だけの指標でつくられたものに、魂が存在するはずもない。
だからこそ、日本の精神的伝統や文化という、皆がおそらく潜在的に持っているであろうDNAを呼び起こす必要があるのかも知れない。


3.5mのカウンター

昨年末に、4.5mのカウンターというのを書いたばかりですが。
今度は、3.5mのカウンターです。
カウンターが好きだから・・・。
というわけでもなく、当然ですが建築主のライフスタイルを考えての提案であるわけです。

ナラ集成材のカウンター

長さ3.5m、奥行き80cm、厚さ10cmです。
吹抜けに向かって少しはみ出すようにしてつくっています。
先端は、物が落ちないように少し工夫して。

吹抜けに面するカウンター

要望は仕事ができるスペースが欲しいと言うことだったのですが、それだけならこんなに大きなものは必要ないわけです。
人は、暮らしの中で一つのことをするわけではないし、家族もいるわけです。
ですから、いろいろなアイディアを見つけて、使い方を工夫して欲しいと思って提案しました。

それをつくっていくのが暮らしなのだと思っています。


建築要素

建築空間というのは、いろいろな部材でできているわけですが、ものすごく単純化すると、床、壁、天井(屋根)で構成されているわけですね。要素という言い方はちょっとわかりにくい言い方なので、単純に部材と考えて下さい。(この場合の要素というのは、空間を構成するものと考えています。)
部材の1つに、建具があります。(建具というのは、簡単に言えば扉です。)
建具は、枠と戸(開き戸や引き戸など)で構成されていますが、この部分の「つくりかた」で空間の印象(雰囲気)は大きく変わります。
例えば下の写真。
左に建具がありますが、枠がはっきりと見える様につくっています。ごく普通のつくりかたです。
これは、梁や柱を見せるように空間をつくっているので、建具の枠も見える様にしています。

鹿屋の家 玄関ホール

しかし、今施工中の多摩平の家は、少し異なるつくりかたをしています。
引き込み戸になっているのですが、枠の考え方は鹿屋の家と同じようにつくるのが普通の考え方です。
多摩平の家の場合は、木部が現しになっている部分がなく、壁や天井は吹き付け材で仕上げます。
ですから、壁や天井の部分はできるだけ部材を目立たないようにしようと考えています。
枠と壁のチリは2mmです。つまり仕上げ材を施工すると、ほとんど面一になります。
建具の枠を、「消す」ということを考えて設計しました。

多摩平の家 建具枠(縦枠)

多摩平の家 建具枠(上枠)

建具の枠を「見せる」のと「見せない」とで、どう違うのか。空間の印象(雰囲気)がどう変わって見えるのか楽しみです。(イメージできますけどw)
下地の状態なのでイメージし難いですが、完成した時にまた写真をアップして比較したいと思います。


4.5mのカウンター

多摩平の家は、木工事も終わりに近づいてきました。
今日は、大物の施工です。
ファミリールームにはカウンターがあります。長さは4.5m、奥行き60cmです。
重量約150kg (^_^;

カウンター4.5m

厚さは5cmでナラの集成材です。

ナラ集成材 厚さ5cm

最終的には、オイル仕上げにします。ケーブルを通すための孔をあけています。

設置完了

スチールブラケット4本と壁内にのみ込ませて固定しています。
足元は、床を落としてあるので、基本的にはテーブルとして使うことを想定しています。
それだけでは無くて、床面からカウンター面の高さは28cmなので、ファミリーコンサートではベンチとしても使えますね。
固定観念に縛られずに、自由な使い方をして欲しいと思っています。


どうしたら心地よい空間になるか

設計する時、常に「どうしたら心地よい空間になるか」を考えています。
建築主の要望は、当然全て聞きます。そこにライフスタイルが見え隠れしているからです。
でも、言われたとおりに設計するわけではありません。
建築主の想いを織り込んだ上で、さらにそれを超えて、豊かで魅力的な空間を提案するのが設計者だと思っていますから。
例えば、全ての部屋が良い環境に向けばよいですが、そうもいきません。
北側に向いてしまう部屋もあります。落ち着いた部屋になるので北側が悪いわけではありませんが、子供室なのでもう少し明るくて心地よい部屋にしたいと考えました。

多摩平の家 北側の子供室

正面が南になります。建物の一部をくり抜くようにしてテラスにしています。
そのテラスに面して子供室をつくりました。勾配屋根を利用した傾斜天井になっていて、南側を高くしています。
これなら、陽も入るし南北に風が抜けていき、心地よい空間になりますね。
それに、空も見上げることができるし、テラスはバルコニーに繋がっていて、建物の周囲が外廊下のような軒下の半外部空間になっています。
ちょっと楽しそうな空間になると思いませんか?


さび

鉄の塀

ソウル市内北村の路地に鉄の塀をみつけました。
防錆されておらず、全体を錆びが覆っています。
錆びの感じは、コールテン鋼ではなさそうですね。

鉄塀のディテール

フレームをアングルで組んでいるようです。上部は形鋼の庇になっていて、門扉の庇にもなっています。
建物の外壁は木材ですが、屋根のフレームもやはり形鋼のようです。
素材の使い方がうまいですね。
年月と共に、質感が出てくるという考え方もあると思われるし、質素で日本的な情緒がある建物です。
下段は石の小端積みです。これもまた良い感じです。


ソウル(2日目)

北村(プッチョン)に伝統韓屋があるのですが、観光地化しているので人が多くて写真撮ってません。(^_^;
ほとんどが石塀で囲まれているので、内部も見ることができません。しかし、道路や建物のスケール感が絶妙で、街並みがとてもきれいです。(人がいなければ。。。)
実際に住んで生活している人がいるので、静かに街歩きしてきました。移動のほとんどは徒歩かバスです。その方がその土地の普段の暮らしぶりなどが垣間見えて楽しいです。
伝統的な家屋がある一方で、当然ですが現代的な建築もあります。

ギャラリー

建物名忘れました。(^_^;
外壁は鉄板をランダムに折り曲げて出来ています。

外壁のディテール

ちょっとピンが甘いですが、ランダムに折り曲げることで陰影に変化をつけています。

壁面

反対側から見ると、その表情は違って見えますね。
ちょっとしたアイディアですが、こういうの好きです。

3日目、4日目は、ただ食べ歩きしただけでなにも無しです。ww
今年年頭にもきましたが、年に一度くらいは家族旅行したいですね。


鹿屋の家

大きな三角屋根と小さな三角屋根をL形に配置して、縁側を巡らせることで内部と外部の連続性を持たせています。
深い軒は、季節の日照をコントロールし、風雨から建物を守る役割を持っています。周囲の田園風景や山並みの自然に調和させるために、外壁には杉板を用いていて、桜島の降灰の対策として屋根は金属屋根にしています。

鹿屋の家外観
©撮影 株式会社アイオイ・プロフォート

鹿屋の家 ©撮影 株式会社アイオイ・プロフォート

大きな三角屋根の空間は、リビングと2階の子供室になっていて、勾配天井でひと繋がりの空間になっています。

鹿屋の家 リビングと2階の子供室  ©撮影 アイオイ・プロフォート

リビングは、縁側へとつながっていて、豊かな住空間となるように工夫しています。

子供室からリビングと縁側を見ています
©撮影 株式会社アイオイ・プロフォート

詳細はHPの作品ページにアップしました。